PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

二十五幕後くらいの殿茉子。

 

 

 たまの休日に茉子はひとり出掛けて、公園の東屋で本を読んでいた。四方に柱が建ち、真ん中にテーブル、それを囲むようにベンチがある。今日はくもっていて人通りは少なく、そうでなくても小さな自分だけの空間を見つけたようで気に入っていた。そのうち雨が降り出して、誰かに迎えに来てもらおうと連絡を取ると、そこに来たのは丈瑠だった。

「ごめんね、わざわざ」「いや」丈瑠は傘をたたむと、茉子のすぐ隣に座った。

「少し雨宿りしていくか」

「濡れちゃったね、大丈夫?」茉子が丈瑠の前髪に手を伸ばすと、丈瑠が茉子の手首を掴んだ。

「え…ちょっと、何?」

「あの屋敷じゃいろいろ邪魔が入る」丈瑠のまっすぐな目が茉子を射抜く。「目、閉じて」

 

 茉子が目を閉じると丈瑠の唇と重なった。唇をなめられ、少し口が開くとそこから舌が入ってきた。体の芯がジンジンするような感覚がする。一瞬唇が離れるが、また重なり、深くなり、かなり長い間そうしていた。今度は耳や首筋に丈瑠の舌が這い、茉子の口から声が漏れた。その声がさらに丈瑠を興奮させ、手が茉子の胸に伸びていた。

「んっダメだよ、そんな…こんなとこで」ざーっと雨が強くなる。

「これじゃまだ帰れない」「帰れないけど…ダメだよ」ふたりの息は荒い。

 

 正確な日にちなんて覚えてない。ある日、ふたりきりになったとき、丈瑠にキスされた。それから時々そうしてる。「好きだ」とか言ってもらったこともない。でも茉子が嫌がることは絶対しない。

 

 先程から雨が少しずつ弱くなってきている。

「そろそろ帰ろう」茉子が胸元に手を置きながら丈瑠を見上げた。「そんな顔してたらみんなに怪しまれるぞ」

「でも二人でこのままいたらもっと…したくなる」真っ赤な顔をして顔を伏せた茉子をたまらなく愛おしくなり、丈瑠は茉子の顔をあげさせるとまた口づけをしていた。舌が絡まり、雨とは違う水音がしている。またどのくらいそうしていただろう。

 

 雨は先程より弱くなったが、やみそうもない。丈瑠は1本の傘しか持ってきておらず、相合傘で帰ることになった。

「もっと寄れ。濡れるぞ」「うん」返事だけでそのままの距離を保つ茉子を丈瑠がぐいと肩を寄せた。「強引」

「いい場所知ってるな。今度行くときは最初から連れてけ」「嫌だよ」

 

 またあんな状況になったらそれ以上を許してしまいそう…傘に隠れて茉子は丈瑠の肩に頭を傾け、丈瑠は茉子の肩を抱いたまま歩いた。