PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

夜伽

第四十幕後の殿茉子。番外編と思ってもいいくらいかも^_^;

 

 

 夜が深まって、茉子はそろそろ眠ろうと灯りを落とそうとしたが、障子に人影が映った。スッと跪いた姿で黒子だと気付く。少しだけ障子をあけ、黒子に耳を寄せる。

「殿の部屋までおいで下さい」黒子が茉子の耳にささやく。

「今…ですか?」黒子は頷くと、茉子に自分の後についてくるように歩き出した。

「あ、あの、でも…」茉子は、慌てて後に続く。ピンクのパジャマ姿で廊下を歩く茉子にはまだ少し肌寒い季節だった。黒子は丈瑠の部屋の前まで案内し、「殿は入浴しておりますので、布団に入ってお待ちください」と耳元でささやくと慌てる茉子を残して、あっという間にいなくなった。

 茉子はそっと丈瑠の部屋に入る。和室に一組の布団とふたつの枕が並べられ、枕元に灯りがともしてあった。

「布団に入って待ってろと伝えたはずだが」後ろから声がして、茉子がふり向くと丈瑠がタオルで頭を拭きながら入ってきた。

「これ…」茉子はまだ戸惑いを隠せない。部屋が暗いために丈瑠の表情はよく分からない。

「…わかってるな?」丈瑠は茉子の肩に手を置くと茉子を布団の上に座らせて、丈瑠も茉子の正面に座った。

 

 志葉家に仕える女家臣は一緒に戦うという使命と共に、志葉家当主に対してときに夜伽の相手もしなくてはならい。まだ仲間になって日も浅く、親交を深めるためにもと彦馬に散々せっつかれていたらしいが、とうとう丈瑠も覚悟して茉子を呼び出したということだった。

「ことはとは、もう?」

「イヤ…今日が初めてだ」丈瑠は緊張からか口ごもった。

「おばあちゃんから聞かされてきたから覚悟はしてる」茉子の顔は真剣だ。

シンケンジャーの一員として召集されて、一ヶ月経とうかという頃だった。生活を共にしていて徐々に日々の暮らしにも慣れつつあったが、丈瑠と茉子は未だにふたりきりでじっくり話す機会もなかった。その習慣については、ある程度の年齢になったとき祖母から聞かされてきたが、そういうものかと自分の中で納得していたものの、さすがに茉子も緊張していた。

「まだ早かったか」丈瑠は布団に並べられたふたつの枕を見ながら、ぼそりと呟いた。

「ううん、わたしは平気」茉子はぎこちない笑顔を向けた。

「いいのか?」頷く茉子に丈瑠も意を決して、自らパジャマを脱いだ。細身ではあったが、適度に筋肉がついた浅黒い肌を見て、茉子は恥ずかしそうに顔をうつむける。そんな茉子のパジャマもあっという間に脱がし、二人は布団に入った。

 丈瑠と茉子は唇を重ねた。重ねては離し、その間隔は徐々に短くなり、そのうち、丈瑠の舌が茉子の口に侵入してきた。「んんっ」初めての経験に茉子は思わず声にならない声を漏らす。丈瑠の手は茉子の胸に伸び、優しく円を描くように触れた。茉子は声が出そうになるのを自らの手で口をふさぐ。

「我慢しなくていい」丈瑠は茉子の耳元で囁いて、耳や首筋に舌を這わせ、手は下半身に伸びていった…

 

 障子越しの月明かりに照らされた部屋で丈瑠が目を覚ました。まだ傷が痛む。隣には指を絡ませ、穏やかな顔で眠っている茉子の寝顔が見えた。

 ドウコクによってケガを負わされた丈瑠が寝ていると、夕食後、茉子が見舞いに顔を出した。特に何かを話したということはないが、部屋を出ようとした茉子と離れがたく手を伸ばしたところまでは何となく記憶にある。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。茉子は黒子に布団をもう一組用意してもらい、丈瑠の隣で床につくことになってしまったのだろう。

 志葉家に伝わる女家臣の特別な使命などない。なんて夢を見たんだろう。丈瑠は茉子を見つめた。

「丈瑠…?」目を覚ました茉子がぼんやり丈瑠を見つめる。

「寒いからもっとこっちへ来い」

「わかった」寝ぼけている茉子は素直に丈瑠の布団にもぐりこんで、再び眠ってしまった。丈瑠の方に横向きに寝た茉子の背中に腕を回し、少しだけ力を入れて抱き寄せた。

「…っ痛」まだ体は完全ではない。心配している茉子を遠ざけようともしたがそれは無理なことで体が勝手に茉子を離さなかった。そのうち、茉子の腕が丈瑠の背中に回って、茉子が丈瑠の背中を優しくなでる。

「大丈夫、すぐによくなるから」

「ありがとう」丈瑠は耳元でささやくと、茉子は目をつぶったまま微かに頷いた。