PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

パジャマ

第十三幕以降くらい源太が仲間になる前の赤桃前提オールキャラ。

 

 

「女の子のいる暮らしというのはいいものですね」突然流ノ介が自らが立てた抹茶を飲みながらしみじみ言う。

「なんか流ノ介が言うとやらしいな」寝転がって雑誌に目をやったまま千明が言う。

「何だと?」

「何だよ」千明は起き上がって二人はにらみ合い、丈瑠はあきれた顔で二人を見ていた。

 

 今日はアヤカシも現れず、あいにくの雨で男たちは何となく奥座敷に集っていた。茉子とことははどちらかの自室で何かしているのか先ほどから笑い声が小さく聞こえていた。

 

「そういえば昨日の夜、流ノ介の部屋に姐さん来てたろ?」

「何?」

 丈瑠の反応にあわてて流ノ介が弁解をする。

「殿、違うんです。前々から茉子はアヤカシやシンケンジャーのことを古い書物から読み解いていて、その解釈について私と話がしたいと部屋を訪ねてきたのです」

「うわぁ~そういう話か。俺のとこ来なくてよかった~」

「茉子は私と全く違う解釈を持っていてとても勉強になりました。ひとりで書を読んでいたときには全く思いもよらぬことでこれだけでも一緒にいる価値があります」

「それだけ?」

「どういうことだ?」

「女の子が夜に部屋を訪ねてくるなんてもっと別の意味があるんじゃないのー?」

 

「茉子に限ってそんなことはない!!」突然の大声に二人は注目した。

「何で丈瑠が急に」

「どうなさいました、殿?」

 

「茉子は同じ侍として流ノ介を頼りにしているのだ。そのような目で見るとは失礼だ」

「…って冗談に決まってるだろ。姐さんにこんなの聞かれたら俺何されるか分からねぇだろ」

「私たちは真面目に論じ合っていただけだ」

「ところで姐さんどんな格好だった?」

「…ピンクのパジャマだ」

「ほぉ~かわいかっただろ」

「ま、まぁ湯上りで顔はピカピカして、ほんのり上気してるんだ。そしてゆるく結い上げた髪の毛がまだ少し濡れててその後れ毛が首筋にくっついてて…」

 

「話振っといてなんだけど…そんな細かい描写いいから。ていうかそれで女の子のいる暮らしがいいと思ってんなら、やっぱやらしいじゃん」

「違っ…先程から漏れ聞こえる笑い声を微笑ましいと思っていただけだ。そうは思いませんか? 殿」

「…別に俺は…」丈瑠の視線が微かに泳いだ。

「丈瑠に聞いても無駄だよ。流ノ介以上のむっつりだから」

「千明! 殿になんてこと!!」

 

「むっつりって何? 何?」

「姐さん!」

 

 いつの間にか奥座敷に茉子とことはがいた。「さっきから何の話してたの?」

「姐さん、気を付けろよ。なんか流ノ介のやつ、姐さんのパジャマ姿がどうのこうのと詳しく話し始めてさ」

「千明! 違うぞ、茉子。昨日の有意義な議論のことを話していたのだ」

「あ、昨日のこと? 楽しかったね。寝る前に急に気になっちゃって。だけどごめんね、パジャマ姿で。なんか家族みたいに思っちゃって。今度から気を付けるね」

「いいんだ。私のことはお兄さんだと思って…」

「えぇ~茉子ちゃん、何の話?」

「んーちょっと流ノ介と勉強会してたの、ね?」

「まぁそうだ」

「ことは、俺たちじゃついてけないって」

「でも茉子ちゃんと一緒がいい」

 

 集まるとすぐににぎやかになる家臣達に少々疎外感を覚えながら、数か月前まではあり得ない光景に丈瑠は不思議な感覚がした。だけどだ…

 

「茉子、書物なら俺だって一通り…」

「流ノ介の意見が聞いてみたかったんだよね。丈瑠とじゃ同じになりそうじゃない?」

「…そういうことだったのか」丈瑠は安堵していた。

「丈瑠も素直に姐さんのパジャマが見たいって言えばいいんじゃね?」千明は丈瑠を茶化すように言う。

「! そういうことじゃ…」

「じゃあ今夜にでも丈瑠の意見も聞きにいこうかな」茉子が丈瑠に笑顔を向けた。

 

 その夜。丈瑠の部屋に茉子が訪ねてきた。「茉子どういうことだ?」

 書物を手にした茉子は髪もしっかり乾かし、部屋着であり、パジャマではなかった。「どういう…って聞きたいことがあるから来たんだけど?」

 

「…よし、じゃ今日は寝かせないからな」半ばヤケになった丈瑠が言った。