第二十八幕 寿司恐怖症になった源太と慰める茉子。少々シリアスかも。金→桃←赤
アヤカシの術によって寿司に変えられた折、寿司恐怖症になった源太は茉子にベタベタされながら「どうしたら元気になれる?」
「写真が欲しいな…茉子ちゃんの写真があればいつでも見られるし」
「それでいいの?」
「それがいいんだ。」
「そう…どれがいいかな」考え込みながらも源太の肩に腕を回す茉子。何となく背中に刺さるような視線は感じるが、茉子が自主的にやってることだ。構わない。
「茉子、ことはもこっちへ来い」若干怒声の丈瑠が声をかける。
「源太のためにお前達も苦手な物を克服するんだ」
「はい」二人は素直に丈瑠の言葉に従う。
「源太も早くしろ」
茉子とことはに挟まれて三人で苦手な食べ物を克服することになったが、源太は逃げ出し、あとの二人は倒れてしまった。逃げ出してしまった源太が見たのは、倒れた茉子を介抱する丈瑠の姿だった。
「茉子!しっかりしろ!」丈瑠は、ひどく慌てているようだ。
(あんな丈ちゃん見たことないぜ)
結局茉子もことはもしばらく自室で休むことになったが、源太は彦馬の荒療治で寿司恐怖症は克服できたらしい。五人はアヤカシを倒した後、源太の屋台でしばらく過ごしたが、帰り際、ことはが源太に呼び止められて何やら話し込んでいる。源太から解放されたことはに茉子がそれとなく聞いてみると、「何でもない」と言葉少なだ。
さらに問い詰めると、ことはは遂に白状した。そのまま今来た道を引き返し源太に詰め寄る。「源太、ことはに無理言わないで!」
「だって今更茉子ちゃんに言っても写真くれねぇだろう?」
「そりゃそうよ。もう立ち直ったんでしょ!」
「俺も見たいな~。こんなとびっきりの笑顔の茉子ちゃん」源太のスシチェンジャーの画面には笑顔の茉子がいた。
「ことはちゃんを怒らないでくれよな。俺が無理して頼み込んだんだ」
突然、茉子がうつむく。「…そんなに私の写真なんて欲しいの? 実物がここにいるのに…?」急に源太の袖口をつかんで大きな瞳でじっと見つめる茉子。
「…」茉子に見つめられて源太の顔がみるみる赤くなる。
「あーっやっぱり無理!」頭を抱えてしゃがみこむ源太。
傍らで茉子も自分の火照った顔を両手でパタパタあおいだ。しゃがみこみながら、茉子を見上げて源太が言う。
「何で茉子ちゃんまで照れてるんだよ?」
「悔しかったの! いつも源太にはからかわれてばっかりだし! けど思った以上にわたしが恥ずかしかった」
二人は顔を見合わせて笑ってしまった。
「あーっそれ! それが見たかったの!」
「茉子ちゃん、ことはちゃんかせいぜい千明くらいしかそういう顔見せないからさ」
「からかうからでしょ」
急に真面目な顔になって源太は言う。
「からかってるわけでもねぇんだけどな」
「? 何か言った?」
「あー、そろそろ戻った方がいいかも」
茉子が振り返ると、丈瑠が腕組みをし、立っていた。
「明日の朝も早い。さっさと帰るぞ」
「じゃあな茉子ちゃん」
「うん、それじゃ」
何となく後ろめたさを感じながら源太から離れた。
丈瑠はどんどん前を歩く。
「怒ってるの?」
「…」
そういう丈瑠の態度にも平気な顔をして並んで歩く茉子だった。
二人を見送る源太の顔がどこか険しい。
「どうしたんです、親分?」
「ちょっかいかけてるのが楽しいと思ってたんだけど」
「親分?」ダイゴヨウが訝しげな声をあげた。