PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

あのお方

赤桃前提のオールキャラ。

 

 

「源太何か適当に握ってくれ」源太の屋台にひとりの少々気の弱そうな青年がやって来た。

「おうよ」威勢のいい返事をして源太が寿司を握りはじめると、青年がため息をついた。

「今日もあの方に会えなかったか~」

「あ~、ついさっきまでいたんだけどな」源太は『あの方』が誰なのかわかっているようだ。

「ホントにあの方のこと何も知らないのか? 結構仲良さそうにしゃべってるじゃないか」

「悪ぃな。あんまり客のこと詮索する主義じゃないんでな」

「さ!できたぜ」

「いただきます」

「で、どういうところが好きなんだっけ?」源太は青年に話しかける。

「そりゃあんなにきれいな人滅多にいないだろ。髪が長くて白い肌がきめ細かくて瞳が綺麗でスラッと手足も長くて…」青年がここまでいうと屋台にいたもう一人の客が反応した。源太はそれに気付きながらも、さらに話を促す。

「まぁ確かにあんなべっぴんさんは滅多にいないよなぁ」

「いつも一緒にいる人達ってなんだろ? この間その中の一人と一緒に歩いてたんだ」

「へぇ? 誰だい?」

「茶髪のチャラそうなヤツ。緑のスカジャン来た」

「ほぉ~デートか」

「あいつは違うんじゃないかな。ねえさんとか言ってたし」急に青年は声をひそめる。

「だけどさ実はいつも一緒に来てる背の高い茶髪の人があやしいんじゃないかと思ってるんだ」

 これには源太も驚いたようだ。「なんでだい?」

「すごく優しい眼で見てる。あれは絶対あの方に恋してる眼だよ」青年は自分の言葉に大きく頷いている。

「…違うな」急にもう一人の客が口を開く。

「…あ」青年はその客に見覚えがあった。

「よくあの方と一緒にいらっしゃる…」

「悪いがあの女は諦めてくれ」

「え…どういう関係なんですか?」

「一緒に暮らしているんだ」

 

「!…そうなんですか? そりゃあんな素敵な人に恋人がいないわけないですよね」青年はがっくりと肩を落とし、「源太、帰るよ。会計」

「いや今日のとこはいいから帰んな」

「ありがとう、源太」青年は今にも泣き出しそうな顔をして帰って行った。

「あ~あ、俺の大事なお客様が」

「嘘は言ってない」

「そりゃそうかもしれねぇけどさ」

 

「こんばんは~」今度は女性二人連れの客のようだ。

「キャー今日は『殿』がいる」

「なんで『殿』?」

「一緒にいる人に呼ばれてるの聞いたの」

「今日は一人だけどいつも美男美女の集団がいて目の保養に来てるの。寿司の味は普通だけど。う~ん、源ちゃん、やっぱり今日は帰るわね」

「あっ、ちょっとお客さん!」

 女性達は茶髪の背の高い青年や緑のスカジャンの少年について熱心に語りながら帰って行った。

「…源太、お前の客はほとんどこういうのか?」

「まさか」完全に目が泳ぐ源太だった。

 しかし流ノ介が茉子を…?

 目の前にいるこの男といい一緒に歩いていたという千明といい油断ならない奴ばかりだ。丈瑠はすっかり冷めた茶をすすった。