PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

水遊び

第七幕後の赤桃前提オールキャラ。パワレンサムライを見ての着想です。ほのぼの。

 

 

 ヤミオロロとの戦闘が終わった後、流ノ介が舵木折神を釣ったという海へ五人で立ち寄ることにした。さすがに海で泳ぐにはまだ早い季節だったが、幸い天気も良く気持ちの良い潮風も感じられた。

 

「なぁ、時間あるんだろ? 少し遊んで行こうぜ」既に千明はスニーカーを脱ぎ、パンツの裾をまくりあげていた。

「勝利のさわやかな香りだな~」伸びをして、流ノ介に話しかけた千明だが、後ろから目くばせをしながら近付いてきた茉子に右腕、左腕をことはに取られて浅瀬に連れて行かれた。

「おい、やめろって」そう言葉で言っていたが、どこか嬉しそうな声音だ。千明が足で海面を蹴ると、海水が茉子やことはの方へ飛んだ。茉子やことはも負けずに応戦している。茉子の長い髪が風になびき、髪をかきあげている。普段、笑顔を見せることが少ない茉子もこの時ばかりは、ことはと一緒になって年相応の女の子らしくキャーキャー騒いでいる。

 

「時々千明の無邪気さがうらやましくなります」丈瑠は突然、流ノ介に話しかけられた。茉子に見とれていたことを悟られただろうか…丈瑠は一瞬言葉に詰まる。茉子からすると千明やことはは弟や妹のような存在で元々面倒見の良い性格もあり、かわいがっていた。千明やことはもまた姉のように慕い、甘えていた。

 

「…そうだな」陽が少しずつ落ちてきてキラキラ光る水面と輝くばかりの茉子の笑顔にまた丈瑠は見とれていた。

「丈瑠も流ノ介も遊ぼうよー」茉子が大きく手を振りながら声をかけてきた。

「あぁ」待ってましたとばかりに流ノ介が走り出す。「殿も参りましょう」「あぁ」と返事はしたもののそのまま流ノ介を見送った。

「お前も十分無邪気だと思うけどな」丈瑠にしてみれば、戦闘能力こそ高いが、流ノ介自身がどこか浮世離れもしていて、子供っぽい部分も残っていると感じていた。今だって、一緒になって真剣に水の掛け合いをしている。

 

「あーあびしょ濡れだよ」水遊びに飽きた千明達がいつの間にか丈瑠の周囲に集まっていた。

「最初にやったのは千明でしょ」茉子も髪の毛が濡れて、服もぴったりと体にくっついていた。

「千明、お前って奴はー!」流ノ介は海で千明に突き飛ばされたらしくすっかり水浸しだ。

「そろそろ黒子も来る。大人しく待ってろ」呆れ気味の丈瑠に千明も乗っかる。

「そーそーはしゃぎ過ぎだっつうの」

「千明ー」流ノ介が千明を追いかけまわしたのをことはが止めようとついていった。

「もー流さんも千明もやめてー」

 

「もうホントに子供なんだから、ね」茉子が話しかけてきた。

「あぁ」

「丈瑠も来ればよかったのに。まさか水が怖いとか?」

「そんなことはない」

「仲間の前なんだからたまには羽目をはずしてもいいんじゃない?」仲間…流ノ介や彦馬が聞いたら怒りそうだったが、丈瑠にはなんだか心地良く聞こえた。

「あぁそうかもな」先程から生返事の丈瑠に茉子が急に丈瑠の腕を引っ張って海の方へ走りだした。

「最初からこうすればよかった」そして丈瑠の顔に手ですくった水をかけた。「やめろ」思わず丈瑠が言った。「いいじゃない」その言葉に丈瑠も足で思いきり茉子へ向かって海面を蹴りあげた。海水が茉子に思いきりかかり、髪の毛が顔や首筋に張り付いている。

「もうやだ」茉子は言葉とは裏腹に笑っている。丈瑠は急に動揺した。先程より水浸しになった茉子が普段見る茉子とはまるで違って見えたせいかもしれない。「お返し」茉子が水をかける。丈瑠もそれに応じた。

 

「何をやってるんだ、お前達は! 黒子をこんなことのために迎えに来させるというのも本来なら許されることではないぞ」帰って彦馬から雷が落とされたのは言うまでもない。茉子の表情を伺おうと視線を向けた丈瑠に茉子は彦馬に気付かれないようにこっそり悪戯っぽく笑う。丈瑠も応じたかったが、うまく笑顔が出せたか自分では分からなかった。