PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

成長

ヨーコ高校編入直前の青黄。

 ヴァグラスを倒し、ゴーバスターズとしての任務は終わった。ヒロムは実家に帰るという。リュウジはこれからどうするのかヨーコは気になっていた。13年も実家を離れて、ヨーコの親代わりとして(…なんていうとリュウジに「兄」だと訂正されるだろうが)暮らしてきた。帰る家のないヨーコはこのままここで暮らせることになっている。リュウジはマシンエンジニアとしてそのままエネルギー管理局で働くことになるのだから、二度と会えなくなるわけではない。だけど…

「どうした?」リュウジにポンと頭を叩かれた。休憩スペースでぼーっとしてるところをリュウジに見つかった。

「ううん、何でもないの」ヨーコが下を向くと、目線を合わせるようにヨーコの顔を覗き込んだ。

「高校編入まで時間ないよ。いろいろ準備しないと」

「うん、そうだよね」ヨーコは、リュウジから逃れるように自分の部屋へ向かった。

「…俺、なんかしたかなぁ?」リュウジはヨーコの背中を見つめる。最近、ヨーコの様子がおかしい。エンターを倒すことはできたが、気が抜けてしまったんだろうか。ヒロムと一緒で戦うのが好きだったからな。リュウジはため息をついた。

 部屋に戻ったリュウジはドアの前のヨーコに気付いて声をかけた。

「あのね、気になることがあって…」

「うん、何?」ヨーコがまた下を向いてしまった。

「…部屋に入る?」

「え…うん」リュウジの手がヨーコの背中にそっと触れると、ヨーコはどこか緊張しているようだった。

「適当に座って」リュウジはどこかにお菓子がないか探し、以前もらいっ放しになっていたチョコレートを見つけた。ヨーコはベッドにちょこんと座る。

「なんだか久しぶり。リュウさんの部屋に来るの」ヨーコはそわそわあたりを見渡している。

「そうだったね」ヨーコは小さい頃から眠れなかったり、落ち込んだりするとリュウジの部屋を訪れることも多かったが、最近はさすがに頻度は減っていた。リュウジがヨーコの隣に座ると、少しだけ避けたように感じた。

「俺、なんか嫌われるようなことしたかなぁ」ヨーコは黙って頭を振る。

「言ってくれなきゃ分からないよ」

「…あのね、リュウさんどうするのかなぁと思って…」

「どうするって?」

「実家に帰るの? ヒロムは実家に帰るんだって。だってリュウさんだってここにいる意味ないし」ヨーコは思っていたことを一気に吐き出した。

「ここが俺の家だよ」

リュウさん」ヨーコが顔を見ると、リュウジはいつもの笑顔で応えてくれた。

「そんなこと気にしてたんだ」

「そんなことって…だってリュウさんがいなくなったら私」リュウジはヨーコの頭をポンポンと叩く。

「自分の中でいろいろ言い訳してたけど、俺がヨーコちゃんと離れたくないんだ。ヨーコちゃんがいくらウザがっても俺はここにいるよ」

 照れ笑いを浮かべたヨーコがリュウジの腕に自分の腕を絡ませ、頭を押し付けてきた。

「嬉しい」ヨーコがポツリと漏らした言葉にリュウジも嬉しくなった。

「それより! ホントに準備してる? 編入まであと…」

「あーもう分かってるって」ヨーコは思わず口を尖らせた。

「…ったく何で共学なんだよ…」ぼそりとリュウジがつぶやく。

「え、リュウさんそんなこと気にしてるの?」

「そんなことって」さっきの会話の繰り返しに二人は顔を見合せて笑った。

「学校に行ってもエネルギー補給は忘れちゃダメだよ」リュウジはゴソゴソとチョコの包みを開けるとヨーコの口に放り込んだ。もごもごと口を動かすヨーコをリュウジがニコニコと見つめた。ヨーコは急いでチョコを飲み込んだ。

「もう急にびっくりするでしょ」

「ごめんごめん」リュウジはヨーコの肩を抱いた。リュウジはいつものようにヨーコの顔を覗きこむ。

「今度、実家行ってみる?」

「え?」

「俺の父さんと母さんに会う?」

「うん」ヨーコの満面の笑顔に肩を抱く腕に一瞬力が入る。

「高校に行ったら何したい?」

「うーん、早く卒業したい」

「はぁ?」ヨーコの即答にリュウジは思わず間抜けな声をあげてしまった。

「あのね、高校って結構楽しいよ? 勉強だけじゃなく友達作ったり…」

「でもリュウさんだって途中までしか行ってない」

「そうだけど…」リュウジは高校1年の終わりにあの事件に巻き込まれていた。

リュウさんの分まで高校生活は楽しむつもりだよ? でもやっぱり高校生とアラサーじゃ、ね。早く大人になりたいの。ちゃんと中身のぎゅっとつまった」

「ヨーコちゃん…」

「ちょっとヤダ、リュウさん泣かないで!」

 リュウさん子供みたい…ていうかおじいちゃん? やっぱり早く私が素敵な大人の女性になってリュウさんのことフォローしなくちゃ! ヨーコは心に決めた。