Mission30後くらいの青黄。
敵メガゾードを撃破して帰途につくとき、ふいに目の前が霞んだ。あれ?…そう思ったときはもう遅かった。
「ヨーコちゃん…ヨーコ!」リュウジの声が遠くに聞こえた。
意識が遠のいたのは、どのくらいだったのだろう。口の中に甘いキャンディの味が広がって目を覚ますと、ヨーコはリュウジに背負われていた。
「ヨーコちゃん気がついた?」リュウジが前を向いて歩きながら話しかけてきた。
「うん」
「またエネルギー補充忘れたんだね?」
「…だって」
必死に言い訳を考えているヨーコに、思わずリュウジは、ふ、と笑った。
「…まぁいいか。お説教はウサダにしてもらおう」きっとヨーコは口を尖らせて怒っているんだろうと思うとまた笑みがこぼれる。
「リュウさん、もう大丈夫だよ。自分で歩ける」リュウジがそっとヨーコを地面に降ろす。
「こっちの方がいい」ヨーコはリュウジと手をつないだ。リュウジの顔を見上げて笑いかけると、珍しく照れたように笑い返した。その笑顔、反則! ヨーコは思わず視線をそらしてしまった。
「ヨーコちゃん、よそ見して歩いてると危ないよ」
「リュウさん、ずるいんだもん」
「何が?」
「なんでもない! それよりさ、デートしようって言ってたけど全然実現しないね」
「う~ん、今はなぁ…ヨーコちゃん、無理してない? いろいろあっただろ。今日の充電切れも頑張りすぎじゃないの?」
「別にそんなんじゃ…」ヨーコは一旦手を離すと、ギュッと腕を組んできた。
「ヨーコちゃん」
「リュウさんはずっとそばにいて。絶対だよ」ヨーコの思いつめた表情にリュウジは頷くことしかできなかった。しばらく無言で歩いていくと、指令室へ帰るためのシューターハッチを見つけた。
「帰ろう」リュウジはヨーコをシューターハッチに促すと先に入れた。狭くて少し薄暗いシューターハッチに入った。少しだけふらついたヨーコに「まだ充電足りてないね」リュウジはポケットに入れてあったキャンディを自らの口に含むと、ヨーコの口に入れた。
「!!…リュウさんっ!」
「お、さっきより元気になった。早く帰らないとウサダの説教のタネが増えるよ」
リュウジはいたずらっぽく笑うと手を差し出した。その手を握ってヨーコは歩き出す。俺もいつかこっぴどくウサダに説教される日がくるかもな。リュウジはヨーコの顔を見た。ヨーコもまたウサダの顔をまともに見られるかなぁなどとぼんやり考えながらリュウジの横顔を見上げ、2人の目が合った。あまりにもタイミングがよくて2人は笑い出し、帰り道を急いだ。