Mission23後のゴーバス青黄。
「ヨーコちゃんだんだん似てきたな」
メガゾードを倒した後、またヒロムとヨーコは些細なことから言い争いをしていた。そんな2人を止めもせず眺めていたリュウジに話しかけてきたのはマサトだった。
「誰に似てるんですか?」
「ヨーコちゃんの母親」
「先輩ってヨーコちゃんのお母さんを知ってるんですよね」
「まぁな」
転送研究センターで、ヒロムの両親とヨーコの母親が働いていて、さらにマサトとは仕事仲間だったとこの間初めて聞いた。
「好きだったんだ」
「え?」
「あの頃、ヨーコの母親が24,5歳だったかな。気の強い女でさ、ヨーコを産んで少しして離婚したって聞いて、本格的にアプローチしようと思ってた」
そういえばヨーコから親の話というのはあまり聞いたことがない。13年前、ヨーコは当時3歳で母親と離れ離れになり、あまりに幼すぎて母親の記憶がないそうだ。
「まさかリュウジと同じタイプの女を好きになるとはなぁ」ポンポンとマサトがリュウジの肩を叩いた。
「!!…俺は別に」
「見てれば分かるよ。俺モテるし、そういうとこ鋭いから」肩に置いた手をそのままにマサトはにやりといやらしい笑顔でリュウジを見上げた。
「ハハ…」リュウジは力なく笑う。ヨーコは昔からリュウジの後ばかりついてきたのは確かだが、最近は仲間も増えて、本来人見知りするタイプでもないし、すぐに打ち解け、ヒロムとはまるで昔から一緒にいたように喧嘩もするほど仲もよい。いつの間にかマサトは消えていて、ヒロムとヨーコは仲直りしたのか笑い合っている。兄離れってやつかなぁ…。ヨーコちゃんが俺の後にくっついていたのも、単に近くにいただけだったからなのかもな、と最近自虐的に思うことが増えた。…今は戦いだ。早くヴァグラス倒してそれから考えよう。
自室に戻ったリュウジはきれいにラッピングされた大きな包みを見てため息をついた。ヨーコの誕生日プレゼントを用意していたのだが、さすが自称モテ男のマサトは花束を用意し、その上、ヨーコの母の思い出という最高のプレゼントを渡した。17歳の女の子にいくら何でも子供っぽいよな。だけどこのままにもしておけない。『お兄さん』としてさっさと渡せばいい。リュウジはヨーコの部屋へ向かった。
「リュウさん、なに?」
「誕生日おめでとう」
「わーありがとう」ヨーコは満面の笑みでリュウジの顔を見上げた。
「じゃ俺は…」
「えー? いいから入って入って」強引に部屋に引き入れ、リュウジのプレゼントを開けた。
「わぁ…」そこには色とりどりのお菓子が入っていた。
「すごーい、リュウさん、すごいすごい」ヨーコの嬉しそうな顔にリュウジの頬も緩む。
「やっぱりリュウさん、わたしのこと分かってくれてる」
「子供っぽいかなって思ったんだけど」
「ううん、そんなことない。ありがとう、リュウさん」
「よかった喜んでくれて」いつものようにヨーコに目線を合わせるように腰を落として頭を撫でた。それなのに
「…うん」照れて真っ赤になってうつむくヨーコに驚いた。
「ヨーコちゃん?」
「リュウさんの気持ち、わたし分かってなかったのかも」
「?」
「ヒロムや陣さんと話すようになって、リュウさんはヒロム達とは違うって思ったの」ヨーコは照れかくしに「へへへ」と笑う。「えっとね…うまく言えないんだけど…リュウさんはお兄ちゃんでもお父さんでもないから」
ふ、と思わず笑いが漏れ、リュウジがヨーコをそっと抱きしめた。
「ヨーコちゃん、ありがとう」
「う、うん」この間まで平気で抱きついたり、『好きにしていい』なんて言っていたこともあったのに、リュウジを男として意識し出したヨーコは体をこわばらせている。ホントはもっと抱きしめていたかったけど、なんだかかわいそうになって体を離した。ヨーコは、ぽーっとなっている。
「今日から俺の誕生日まで少しだけ歳が近くなったね」
「ほんのすこーしでしょ」ヨーコの表情が緩んだ。
「おやすみ」
「あ、あの…ちょっと恥ずかしいけどイヤとかじゃないから」
「わかってる」いつもの癖で頭に手を置いた。今度はヨーコもにっこり笑い返した。
「…おやすみなさい」部屋を出て廊下を歩いた。今度、先輩にヨーコのお母さんのこと聞いてみようかな。先輩は笑うだろうか。