PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

ロッカー

Mission15後のゴーバス青黄。

 先輩の目的は一体何だ?―――突然現れた天才エンジニア・陣マサトは13年前と変わらない姿だった。しかし、バディロイドと共に変身能力を身につけ、メガロイドに苦戦していたリュウジたちに応戦したかと思いきや、エネトロンを持ち逃げしてしまった…。リュウジは未だ混乱し、休憩室でひとり考え込んでいた。

リュウさん、どうしたの?」

「イヤ、何でもない」ヨーコは何も言わずにリュウジのそばに座った。

「ねぇ、リュウさんの思い出コレクション見せて」休憩室のロッカーに閉まってあったリュウジの特命部に入った直後に持っていた私物をさっきゴリサキがぶちまけてしまった。高校時代の生徒手帳、カズヤと眺めていた雑誌、ロボットコンテストの賞状…リュウジはとっくに処分したと思っていたが、ゴリサキが大事に保管していたらしい。

「どうするの? あんなもの」リュウジにとってはもう必要のないものばかりだった。

リュウさんの高校時代のこと知りたいんだもん」リュウジはロッカーを開けると、ヨーコがそばに来てロッカーの手前においてあったものをさっと取り上げた。

「これ、もらってもいい?」それはリュウジの通っていた高校の生徒手帳だった。

「これを? 別にいいけど何もないよ」証明写真が貼ってあるだけでメモ帳代わりも使っていないこんなものをどうしようというのだろう。ヨーコの持っていた生徒手帳をパラパラめくるとはらりと紙片が落ちた。

「なんだろ、これ?」ヨーコが小さなメモを広げた。『リュウジ君へ 今日の放課後、校舎の裏で待ってます』女の子の文字で書かれたらしいメモだった。「うわ、ラブレター!」

「…覚えてないなぁ」

リュウさん、ひどい…でも彼女とかじゃなかったんだ」

「ん~あの頃は女の子にはあんまり興味なかったかな」

リュウさん優しいし、モテたんじゃない?」

「カズヤと一緒にマシンの話ばかりしてたし、クラスの女の子ともそんなに話す方じゃなかったよ。それにね…」ぽんとリュウジはいつものようにヨーコの頭に手を乗せた。

「ヨーコちゃんと一緒にいたからこうなったんだと思うよ」

「ホントに?」ヨーコの顔がぱっと明るくなった。

「手のかかる子だったからなぁ…あ、今もか」にやりとリュウジは笑ってみせた。

「そんなことないよ。結局、この子には会わなかったの?」

「うーん…」メモをもらったことすら忘れていたくらいだ。その顛末など覚えているはずもない。

「あーやっぱりもういい! これ以上他の女の子のこと考えなくていいから! それとさ、今は余計なこと考えない方がいいよ」

「?」

「…先輩のこととか…あんまり考え過ぎないほうがいいよ」

「心配してくれたんだ。ありがとう」リュウジはごそごそと自身のポケットを漁った。ポケットの中にはキャンディが入っていた。「あーん」リュウジはヨーコの口にキャンディを放り込んで、ニコニコ眺めた。見つめられてるのに照れたのか、リュウジに抱きついて、顔をぎゅっとリュウジの胸に押し付けていた。

「どうしたの?」

リュウさんのこと、もっともっと知りたいよ」

「俺も…ヨーコちゃんのこと何でも知ってるつもりでいたけど、そんなことないな」

「そうなの?」顔をあげて、リュウジの顔を見つめた。

「どんどん大人になってる」

「ほんと?」

「嘘ついてどうするの?」

「えへへ」照れ笑いを浮かべ、またぎゅっと抱きつく力が強くなった。そうやって甘えるところは子供みたいだけどな…ヨーコに言ったら怒られそうで、リュウジは口に出すのをやめた。

「さぁ今日はもう休もう。ヨーコちゃんのおかげでゆっくり眠れそうだ」

「じゃあさ…」

「おやすみ」リュウジは不服そうな顔をしているヨーコを残して休憩室を去った。

リュウさんの意地悪ー…」リュウジもヨーコを好きだといってくれてるし、ヨーコももちろんリュウジが好きだけど、リュウジが優しいだけのお兄さんではなくなってしまうことを少し怖く思っているヨーコもいた。ヨーコは、生徒手帳の中の今より若いリュウジの顔をそっとなでた。「もう少し子供でいてもいい?」高校生のリュウジは今と変わらぬ笑顔を見せた。

 自室に戻ったリュウジはベッドに大の字になった。あの小さかったヨーコちゃんがねぇ…。俺のこと、励まそうとしてるなんて、俺も歳をとったかな。先輩のことはくよくよ考えても仕方ないのかもしれない。衝動的にヨーコにいつも以上に触れたくなることもあるが、今は何とか理性を働かせている。その前に、ヨーコちゃんにはもうちょっと男として意識してもらわないとね。あんなに簡単に抱きつかれてるようじゃ俺もまだまだだな。スキンシップは嬉しいがどこか複雑な感じがするリュウジだった。