ヨーコちゃんの休日の過ごし方があまり外に出ないらしいので妄想。
とある休日。軽くトレーニングを終えたリュウジが着替えようと居住区の廊下を歩いていていると、大あくびをしながら自室のドアを開けるヨーコに出くわした。いつものパジャマ代わりのTシャツ、ショートパンツ、パーカー姿で髪はボサボサ。
「おはよう」リュウジが声をかけた。
「おはよう。トレーニングしてたの?」
「うん、少しだけ」
「これからどうするの?」
「う~ん、特に予定はないなぁ。着替えて、読書かな」
「リュウさんの部屋に行ってもいい? 邪魔したりしないから」
「じゃ少ししたらね」
たまの休日もヨーコはあまり出かけたりしない。トレーニングと寝るだけ。そして、リュウジの部屋で過ごすことも多い。リュウジの部屋に入り浸ろうとするヨーコを遠ざけようとしたこともあったが、ヨーコが不安定になってしまい、結局のところ、ヨーコの好きにさせている。リュウジにとっても心地のいい時間だ。
「リュウさんも最近は出掛けたりしないね?」ヨーコは椅子に座ってリュウジに髪をとかされながら机の上に置かれた鏡越しにリュウジを見上げた。「そうだなぁ」
「前はさ、彼女いてデートしてたんでしょ」
「そうだねぇ」どんな髪型にしようか思案してるリュウジは上の空の返事をする。少し考えていたがサイドを編みこんで残りの髪をまとめて、お団子にしてくれた。
「リュウさん、すごい! ヘアーメイクアーティストになれるよ!」
「ん~どっちかと言ったらトリマーに向いてるかもね」
「とりまー? 何それ?」
「フッなんでもない」リュウジが鏡越しに笑顔を向けた。
「わ~すごいすっきり」ヨーコが気に入った様子でサイドの編みこみを鏡で見たり、頭のお団子を触っている。
「リュウさんは彼女とどこに行ってたの?」
「いろいろ。動物園とか遊園地とか映画とか」
「ふーん。リュウさんこんなに優しいのに案外長続きしないよね」その言葉にリュウジは苦笑した。
「ヨーコちゃんに彼女紹介したことなんかあったっけ?」確かに彼女がいたことはあったが、それについてヨーコに話したことは一度もなかった。
「ここってリュウさんファンが多いから結構耳に入ってくるの」
「今は戦いも本格的になってきたし、それどころじゃないよ」リュウジはベッドに腰掛けた。広げた脚の間にヨーコがちょこんと座った。リュウジはヨーコの細い腰に腕を回した。
「ヨーコちゃんこそどうなの? 仲村さんが若い女の子が休みの日に外にも出ないでって心配してたよ」
「えー? 自分の好きにしてるだけなのになあ」ヨーコはリュウジの体にもたれかかって、リュウジを見上げた。
「最近、仲村さんと仲良くしてるんじゃないの?」
「うん楽しいよ。でも、こうしてリュウさんの部屋にいるのはもっと好き」
「それはそれでどうなんだろうなあ」
「変かな?」
「あんまり健康的な感じはしないよね」回した腕をほどいて、ヨーコを立たせてリュウジも立ち上がった。後ろからヨーコの両肩をつかんでヨーコにささやいた。「勉強教えてあげよっか」
「寝てる方がマシ!」ヨーコは逃げるように部屋から飛び出していった。
リュウジはベッドに大の字になって天井を見た。ヨーコの指摘通り、今まで何人か彼女もいたが、いずれも長続きせず終わった。ヨーコが幼い頃は、小さい子のお守りに戸惑いもあり、休みの日はデートばかりしていたこともあった。ヨーコにはウサダをはじめ、大事に愛情を注いでくれる存在がたくさんいてリュウジひとりいなくなろうとも平気だと思っていたのだ。
今はむしろ逆だ。俺がヨーコを求めてる。…やっぱり昼間から部屋にこもるのは健康的じゃないな。ベッドから起き上がり、少し外の空気でも吸おうとドアを開けた。
「痛!」そこには今まさにドアをノックしようとヨーコが立っていた。
「ヨーコちゃん、大丈夫?」
「大丈夫…ちょっと痛いけど」みるみるおでこが赤くなっていた。
「ごめんごめん」慌ててリュウジがおでこをさすった。廊下をきょろきょろ見回すと「ちょっと来て」部屋にヨーコを引っ張りいれて、おでこにキスをした。
「少しはマシになった?」ヨーコはみるみる真っ赤になっていく。