PeachRedRum

高梨臨ちゃんのファンです

片想い

Mission11後くらいの青黄。

 リュウさんの部屋に行きたいなあ、でもまた追い出されるかな? 幼い頃からヨーコは眠れないときはリュウジの部屋で休むことが多かった。リュウジはヨーコが眠れるまで絵本を読んでくれたり、とにかく優しかった…のに、最近は何かと理由をつけて追い出されてしまうことが多くなった。ヨーコはひとり自室でリュウジを想う。

 リュウさん、わたしのこと、大人の女性として接するようにするんだって。また泣き落としでリュウジに解いてもらった宿題を眺めた。リュウさん、先生より字がきれい。ホントはヨーコちゃんのためにならないんだけどな、なんて言いながら結局リュウさんはいつもやってくれる。宿題難しいし、学校つまんないし、学校行かないでリュウさんが勉強教えてくれたらいいのにな。

 そんなとき、ドアをノックする音がした。「俺」短い言葉ながら、それがリュウジの声だと即座に分かった。椅子の上から跳ねるようにドアの前に立った。

「ごめん、寝てた?」

「ううん」ぶんぶんと首を振った。「…どうしたの?」リュウジの顔色が悪く、ひどく落ち込んでいるように見えて、思わず声をかけた。

「また熱暴走しちゃったから、少し疲れたのかもなぁ」

「部屋に入って少し話そうよ」

「イヤ、迷惑かけてごめんって言いに来ただけだから」

「ダメ、早く入って」力持ちのリュウジがヨーコが強引に腕を引っ張っただけで簡単に部屋に入ってきた。ヨーコがドアを閉めるのを確認するや否や、「ヨーコちゃん、ごめん」リュウジに抱きしめられた。

リュウさん?」

「ヨーコちゃんやヒロムよりずっと年上なのに迷惑かけてばっかりだな」

「何で? わたしリュウさんに頼られたら嬉しい」リュウジは無言のまま、ただヨーコを抱きしめていた。まだ熱暴走の影響が残っているのかリュウジの体は熱かった。ヒロムも仲間になって戦い始めると、ずっと年上のお兄さんとして見ていたリュウジがもっと対等な仲間として弱みも見せてくれた気がして嬉しかった。

 この前、ゴリサキがお兄さんぶって上から目線とか言ってたっけ。じゃあ30分かけてるというあの七三もお兄さんぶるアイテムなのかなぁ、なんて思ったら急に可笑しくなった。ふふ、と笑い声を洩らすと、リュウジが不思議そうな顔をした。

「ごめん、苦しかった?」

「ううん、リュウさんもなかなか苦労してるんだなぁと思って」

「?」

リュウさん七三より今の方がいいのに」任務以外のリュウジはもっと無造作で自然な髪型をしていた。「ずっとずっと若く見えるし」

「そうかなぁ」リュウジが珍しく照れくさそうに頭をかいた。ふぅと一息ついてヨーコを解放した。

「チャージ完了。ありがとう」顔色も大分良くなったように見えた。

「またリュウさんの部屋に行ってもいいよね?」

「…そうだな。俺がこんなことしといて拒否る理由はないか…でもなぁ成人するまでは…」

リュウさんがもっとおじさんになっちゃう」二人は顔を見合わせて笑った。

「今日は?」ヨーコはリュウジから離れがたい気分になってリュウジのTシャツの裾を掴んでいた。

「そんな眼で見るなよ」リュウジはいつものようにヨーコの頭をポンと触って部屋から出て行った。ヨーコは閉まったドアに向かってぷぅっと頬を膨らませてみた。

 リュウジは本格的に戦うようになってから、ケジメをつけようとヨーコと距離を置こうとした。だが、距離を置くようになってからヨーコのことばかり考えていることに気付いた。ヨーコもリュウジに好意を持ってくれてはいるし、リュウジが望めば、それに応えようとするだろう。それはまだまだ「お兄さん」の延長線。

 それじゃ意味ないんだよ。リュウジは誰もいない廊下を歩いて自室に向かった。