ゴーバス初書き。私の場合、ゴーバスは青黄一択!
夕食が済んで寝るまでの少しの間、リュウジは自室で過ごしていた。
コンコン。リュウジの部屋のドアをノックする音。
「…誰?」
「ヨーコ」
リュウジがドアを開けると、いつもきっちり結んだ髪も下ろし、Tシャツの上にパーカーを羽織ったショートパンツ姿のヨーコが枕を持って立っていた。
「リュウさん」
「だーめ、もうヨーコちゃんは部屋に入れない」
ヨーコは睨むようにリュウジの顔を見上げた。
「どうしてそんな意地悪言うの?」
「ヨーコちゃん、子供扱いは嫌だろう? だから大人の女性として扱ってるんだよ」
下を向いてうつむいてしまったヨーコにリュウジは優しく語りかけた。
「眠れないときもあるかもしれないけど、もう一緒には寝ないよ」
「リュウさん、お願い」ヨーコは半ベソをかいていた。こんな顔をされると弱い。
「…部屋に入るだけだよ」リュウジはヨーコの脆さを知っていた。
少し前までリュウジの部屋にヨーコが入り浸ることはしょっちゅうだった。あまりに普通のことでヨーコが仲村との雑談の中で話してしまったらしい。後日、仲村から呼び出されたリュウジがそのことを指摘された。
「ヨーコちゃんのこと、大事な妹みたいに思っているのは知っているつもりです。でもやっぱり今みたいな状況はおかしくないですか?」
おかしい、よなぁ。少し考え込むリュウジの傍らからするりと部屋に入り込んで、すたすたとベッドに向かうヨーコのパーカーのフードを慌てて掴んだ。
「ヨーコちゃん!」ヨーコが手に持っていた枕をとり落とし、せき込んだ。「ひどいよ、リュウさん」
「ごめんごめん、一緒に寝るのは駄目だって言ったろ?」
「ね、何でいけないの?」
「ヨーコちゃんはもう大人の女性だからね」ため息をつきながらリュウジはベッドに座る。
「おいで」ヨーコはリュウジの隣にぴったりくっつくように座った。
「ヨーコちゃんは俺と一緒でよく眠れる?」
「うん、リュウさんと一緒の方がよく眠れるよ」
「俺は違うの」
「え?」
「最近、ヨーコちゃんどんどん大人っぽくなってキレイになって、俺も一応健康な男だし、隣で何もしないで眠るのは辛いんだよ」子供の頃から一緒にすごしてきたヨーコに軽蔑されてもはっきりと本音を言った方がいいと思い、リュウジは言った。
「それでかぁ。時々夜中に目が覚めるとリュウさん背中を向けてることが多くて寂しかった」あまりにあっけらかんとしているヨーコにこれ以上どう説明しようかと頭を抱えたリュウジに「わたしはいいよ」
「ヨーコちゃん?」
リュウジは無言でヨーコの両腕を掴んでそのままベッドに押し倒した。唇と唇が触れそうになるほど顔を近づけた。「こんなことしても?」
ヨーコは大きく目を見開いたが、決心を固めたように目を閉じた。
「…いいよ」ヨーコの体が震えているのが分かり、リュウジはヨーコを抱き起こした。
「ごめん。やっぱり今日は自分の部屋に戻った方がいい」
「リュウさんってやっぱり意地悪」リュウジの腕の中でヨーコが頬を膨らませているのが分かる。
「私もリュウさん好きだよ」
「じゃ俺の言うこと聞いてくれるよね?」リュウジがヨーコから体を離して、立ち上がるとヨーコが落とした枕を拾ってヨーコに渡した。「ヨーコちゃん、おやすみ」
「リュウさん」
「ん?」少し顔を近づけたリュウジの頬にヨーコの唇が軽く触れた。
「おやすみなさい」真っ赤な顔をして部屋を出て行くヨーコをリュウジは茫然と見送った。
「…どこで覚えたんだよ」
子供の無邪気さの延長で慕っているのだと自分に言い聞かせてきたリュウジにはヨーコの行動が衝撃的だった。俺ももう少し暴走してもいいのかなぁ?とヨーコが出て行ったドアをしばらくぼんやり見つめていた。